期間

 

Takayuki Tsujii

辻井隆行

社会活動家
ソーシャルビジネスコンサルタント

1968年生。早稲田大学大学院社会学科学研究科(地球社会論)修士課程修了。99年、パートタイムスタッフとしてパタゴニア東京・渋谷ストアに勤務。マーケティング部門、卸売り部門などを経て、2009年から2019年まで日本支社長。退職後の現在は、自然と親しむ時間を大切にしながら、企業や一般社団法人のビジョン・戦略策定を手伝いつつ、自律分散型社会の実現に向けた小さなプロジェクトに関わる。また、#いしきをかえようの発起人の一人として、市民による民主主義や未来のあり方を問い直す活動を続ける。

Jリーグ非常勤理事(社外)社会連携担当
ボーダレスジャパン・アカデミー メンター
Japan Sustainable Fashion Alliance(JSFA)事務局スタッフ

フェアトレードという言葉を聞くと、「平等」と「公正」の違いが頭に浮かびます。平等は全員に同じ条件を当てはめること。例えば、全ての国の従業員に一律の賃金を供与すること。フェアトレードと聞くと、発展途上国に生きる労働者の賃金が安いのは「その国の物価が安いから仕方がない」と考える方がいるかも知れません。確かに国によって物価は違います。しかし、フェアトレードが求めているのは、そういう意味での平等ではありません。フェアトレードが実現しようとしているのは「公正」です。つまり、結果として全員が同じ”条件”を手に入れること。毎日の食事を手に入れたり、子どもを学校に通わせたり出来るようになること。フェアトレードの目的の一つは、どこの国であれ、日々を暮らすために必要な「生活賃金」が全ての労働者に供与されることです。確かに遠い世界の話ではあります。けれども、例えば、私たちが着る衣類の多くは、バングラデシュやカンボジアやベトナムといった国の方々が縫製しています。その国の水準に照らしても、人として扱われているとは言い難い、不当に安価な賃金で働かされている労働者も少なくありません。今、日本における衣料品の国内生産率は3%を切っています。つまり、私たちが着る衣類は、遠い国々に生きる誰かが作っているのです。そうした国々の縫製労働者が作った衣類を日々着ている私たちは、彼ら、彼女たちが苦しい生活を強いられる社会システムを知らず知らずのうちに支えてしまっている場合だってあるのです。賃金以外の条件、つまり、働く人の体に無害な空気、危険が及ぶことのない安全な労働環境、一人一人の尊厳が守られる労使関係。そういうものは、先進国だろうが、発展途上国だろうが、平等かつ、公正であるべきだと私は考えます。 フェアトレードは、不公正で、不平等な現状を変えるための一つの有効な手段です。日本にいながらにして、遠い国々で私たちの食料や衣類や嗜好品を生産している方々に想いを馳せる。フェアトレードの製品を手に取ることで、自分自身の気持ちだって暖かくなるかも知れません。このキャンペーンをきっかけに、生産者と消費者の両方が幸せを感じられる社会への移行が加速することをお祈りしています。